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コロナ禍でのクロスボーダーM&Aの新たな取り組みと手応え

┃ASEAN地域の入国制限が緩和されましたね。

日本M&Aセンターグループで拠点を置くシンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシアでは現在、ほとんど隔離なく入国ができます。海外渡航制限下では現地面談、現地訪問が思うようにできず、M&Aの検討がストップする企業も出ていました。コロナ禍でボトルネックとなっていた海外渡航規制がなくなることで、今後、新たな案件も増えてくると思います。



┃昨年(2021年)は厳しい状況ではありましたが、ASEAN地域で成約を実現しています。

2021年はコロナ禍でしたが1年間で8件のM&Aを成約させることができました。近年、日本M&AセンターグループではASEAN地域の営業体制を強化しています。2021年11月にタイ駐在員事務所を開設し、12月にマレーシア駐在員事務所を現地法人化、2022年1月にはシンガポール・オフィスを現地法人化しました。5カ国に現地拠点がある強みを活かした取り組みがこの結果につながったと思います。


┃現地面談や視察ができないことをネックに感じる企業に対して、Webを活用した支援を行ったそうですね。

製造業のM&Aに携わった際、譲受け企業から譲渡企業の工場内を確認したいとの申し出があり、動画を作成しました。見たいポイントを事前にヒアリングした上で、設備や生産ラインを一つひとつ撮影し、現地社員にインタビューも行いました。もちろん実際の現地視察は重要ですが、動画に残したことで、通常であれば限られた人数しか見ることができないところを、関係するメンバー全員で何度でも確認することができるというメリットが生まれています。より細かい部分まで見る事ができてかえって良かったと言っていただきました。
また、動画をTOP面談前にお送りしておけば、前もって質問事項を準備できますので、面談内容もより具体的で充実したものになります。
検討を進める途中も、疑問点が出てくればその都度Web面談を設定して密なコミュニケーションが可能になり、渡航回数が減っても面談回数は格段に増えました。だいたい30~40回実施しています。
デューデリジェンス(買収監査)の資料もオンライン化しました。膨大な情報の管理が容易になり検索も可能になったことでより効率的になっていると思います。
さらに交渉の終盤ではオンラインでPMI(M&A成立後の統合プロセス)のディスカッションを頻繁に行いました。そもそもM&Aは限られたメンバーで進めますが、 成約後、実際に業務を行うのは現場サイドの人たちです。そのため動画を実際に関わっていく人にも共有し、PMIのディスカッションをすることで、 M&A 後の未来を現場と共有することができました。
一番の変化は成約までの期間です。これまでは最初の渡航の日程調整だけで1カ月以上かかることもありましたが、最初のご提案からすべてオンラインで進めることで、約半年で成約まで至った案件もあります。

高いポテンシャルを秘めたASEAN。攻めの戦略として今こそ検討を

┃日本国内のM&Aと海外のM&Aの同じ点や異なる点、および海外M&Aで留意する点やメリットを教えてください。

日本とASEAN企業の共通点は、中堅・中小企業の置かれた環境が似ているというところでしょうか。特にマレーシアは、平均年齢が30代と若い国で経営者の年齢も40代から50代前半ですが、日本同様に後継者不在に悩んでいる企業が多いのです。今後もM&Aの需要は高まっていくと予想されます。またオーナーが成長を追求し従業員に還元したいと思っている点や、従業員の勤勉な性格も似ているため、日系企業とASEAN企業は相性がいいと思います。
一方、進出する上で日系企業が押さえるべきポイントとしては、事前に外資規制やライセンスなど国内企業同士では議題に上がらない法務面について調べておいたほうが良いという点です。またベトナムやインドネシアなどは、市場のポテンシャルは魅力的ですが、財務や税務の透明性が低いため注意が必要です。デューデリジェンスで多少コストがかかったとしても、綿密にチェックした方が良いでしょう。

┃クロスボーダー M&Aを検討している経営者に向けてメッセージをお願いします。

少子高齢化による日本市場の縮小を鑑みると、攻めの経営をするためにもクロスボーダーM&Aは重要な戦略であることに変わりはありません。動画やWeb会議により相互理解が深められ交渉までできる今日、海外だからとハードルを高く上げすぎず検討していただきたいです。渡航制限が緩和され海外へ自由に行き来できるようにはなりましたが、今後もオンライン化で得たノウハウをお客様の要望に応じ活用していく予定です。