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 コロナが落ち着き、本格検討に進むディールが増えてきました。そこで、今回はM&Aにおける終盤ステージである買収監査(デューデリジェンス)における留意点について解説したいと思います。

買収監査の概要

 M&Aのプロセスでは基本合意契約を締結した後、最終契約に至る準備段階として買収監査が行われます。内容や期間はディールの規模や複雑性によって様々ですが、一般的に財務・税務・法務について専門チームに依頼します。また、場合によってはビジネス・環境などの範囲で監査が行われるケースもあります。

 一般的にASEANの中堅中小未上場案件の場合、1カ月~2カ月程度で買収監査が行われることが多いです。また、リモート環境になる為、一般的にオンライン上にセキュリティが確保されたバーチャルデータルーム(VDR)を設置し、そこに依頼資料や質疑応答の変遷をまとめる事となります。
 また中堅中小企業の場合、もっとも時間が掛かるのが資料の収集・整備となります。極端な話、依頼資料が全て完璧に揃えられた時点で買収監査の70~80%が完了できたと言っても過言ではありません。

 そのような理由から、基本合意交渉がある程度まとまり、お互いに次のステージに進める意思が確認できた段階で買収監査の準備(監査チームの選定・依頼資料の収集)を先んじて始める事をいつもお勧めしています。

買収監査チームの選定方法

 買収監査チームの選択肢としては、主に以下の3つが挙げられます。

  1. 4大監査法人・法律事務所
  2. 独立系の中堅会計事務所・法律事務所
  3. 小規模ローカル会計事務所・法律事務所

※3は上記1、2から独立したプロフェッショナルが運営していることが多い


 費用は当然ながら選択肢1>2>3となりますが、ベストな選択肢は、ディールの規模・複雑性によって変わってきます。例えば、対象会社のグループ会社の数が多く、また複数の国で展開されているような場合は選択肢1をお勧めしています。逆に、対象会社の売上が数億円の小規模で、ビジネスもシンプルな場合は、費用対効果の面から選択肢3を選ばれるお客様も多いです。

 また、こういった専門性の高い業務の場合は、「どの事務所に頼むかではなく、誰に頼むか」が重要となってくるため、信頼できる特定のプロフェッショナルがいる場合は事務所の規模に関係なくお勧めすることもあります。
 費用についても、同じ事務所であっても依頼の仕方、業務のスコープによって費用がかなり変わってきますので、目的に合わせて選別し具体的業務内容を相談するのが必要となります。

売主側の感情・ストレスにも注意

 一般的に、中堅中小企業の売主オーナーにとって買収監査は非常に手間・ストレスが掛かります。また、買収監査チームのプロフェッショナルも業務を遂行する事に集中するあまり、売主側に対する当たりが強くなることがあります。
 この時に、売主側のケアを同時並行で行っていく事が、信頼関係の維持・今後の最終交渉の前段階として非常に重要になります。買収監査で長期間拘束され、ストレスを掛けてしまうと売主オーナーが感情面で意固地になってしまい、その後の最終交渉そして買収後の運営に悪影響を与えてしまうケースもあります。

 買収監査自体は当然ながら論点の見落としの無いようしっかりと行う必要はありますが、同じことをするとしても伝え方・やり方を変えるだけで売主側のストレスはずいぶん変わります。なので、買収監査を進めながら同時に大変な作業に長期間協力して頂いている売主側への感謝、気遣いもしっかりと伝えていく事が全体のプロセスをスムーズに進める為に重要になります。

 今回は、ディールの後半ステージで必要となる買収監査について現場の視点から解説させて頂きましたが、如何でしたでしょうか? 日本M&Aセンターでは、皆さまが公正な形で納得のいくM&Aを出来るように引き続き支援していきたいと考えています。

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