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 Xin chào!
 日本M&Aセンターベトナムの黒沢です。ホーチミンへ赴任して7カ月が経過しました。
 今回のブログではベトナムへ出張される方のご参考となるよう、ベトナム企業との面談時のポイントを事前準備、当日、会食と3つに分けて解説します。

1. 事前準備 ~面談成功の道は準備から!~

大きく“写真映え”する手土産を

 手土産は見映えが良く大きいものを選ぶことをお勧めします。日本では手土産を渡す時に遠慮がちに受け取ることが多いと思いますが、ベトナムでは手土産を渡す時に受け渡しの写真を撮ります。オープンな文化の国ですので、この写真は後に「日本の会社が(こんな大きなお土産を持って)私の会社まで来てくれた」と紹介されることもあります。日本から運ぶのは大変ですが、大切な面談相手に対してはまずは見映えのよい大きな手土産を準備することをお勧めします。
 お菓子の場合は、羊羹やチョコレートのように極端に甘いお菓子よりも、薄味のお菓子が好まれる傾向があります。ベトナム料理は素材の味を大切するために薄めの味付けに慣れているからです。残念ながら私が今年の2月の出張時に手土産でオフィスへ持って行った「白い恋人」は4月の赴任時にもオフィスに残っていました。ベトナム人社員によると、甘すぎるとのことでした(笑)。
 お酒の場合、ウィスキーや日本酒、焼酎のいわゆる「有名な銘柄」はベトナムでも販売されています。したがって有名な銘柄よりも、社長の出身地の地酒や焼酎など、何か関連するストーリーのあるものをお持ちいただくと特別感が出ます。またベトナムは輸入品に対する関税や輸送コストなどの理由から、輸入されたお酒の値段は3倍くらいになります。お酒は持ち運ぶのが少し大変ですが、物の価値としても3倍になるのでお得な手土産かもしれません。
 他にも絵付けされた陶器をプレゼントした会社などもありました。写真を撮る習慣と同様に、飾る習慣もありますので、特別な面談の時は会社に飾れるような装飾品でも良いかもしれません。

服装は南北で異なる気候にご注意を

 ハノイには四季があり冬は10℃を下回ることもあります。一方、ホーチミンは雨季と乾季のみで一年中温暖です。時季や目的地によって服装は異なりますが、今回は皆様が気にされる軽装時のビジネスでの服装についてお話しします。

ホーチミンと夏のハノイ

 基本的には夏のハノイや一年中温かいホーチミンにおいては日本のクールビスの服装をして頂けると好ましいです。街中でネクタイをしているビジネスマンはほとんど見かけません。したがって余程特別な面談以外はノーネクタイで大丈夫です。
ただし、一点だけ補足しますと面談参加者の中で筆頭の方はジャケットをお持ちいただくことをお勧めします。手土産を渡す時など先方と一緒に写真を撮る時には、ジャケットを羽織って頂けるとより好印象です。

冬のハノイ

 ハノイの四季は概ね、東京の四季よりやや温暖なイメージです。とはいえ、1月のハノイは気温が10℃より下がることもあるようですので、普段のスーツに薄手のコートがあると良いでしょう。

抜かりない面談準備とは?

 いよいよ、面談の準備について解説していきます。ベトナムの場合、母語の違いから通訳を介するケースが多いので、日本語話者同士の面談と比べると、2~3倍の時間を要することが一般的です。お互いが英語で話せる場合やどちらかがベトナム語若しくは日本語を話せる場合にも、語彙力の差によっては理解に時間がかかることがありますので、事前準備が大切になります。事前準備は以下の2点がポイントです。

  1. 通訳の選定
  2. プレゼン資料及び質問事項の事前共有

①通訳の選定

 通訳を利用する場合、ベトナム語と日本語が話せるだけでなく業界に関する知識を持つ方を選定することが望ましいです。ビジネスの重要な面談では日本語能力試験N1の方を選ぶのはもちろんですが、業界知識や通訳能力、話し方や性格によって同じN1でも大きな差が出ますのでご注意ください。
 私はお客様のご希望で通訳を紹介する時は、通訳能力と話し方や性格を確認済みの信頼できる通訳をご紹介します。その上で面談企業の業種や目的を事前にお伝えして予習をしてきて頂きます。

②プレゼン資料及び質問事項の事前共有

 面談を効果的かつ効率的に進めるためには、1週間前までにプレゼン資料(面談で伝えたいこと)及び質問事項(面談で知りたいこと)の事前共有をお勧めします。
 多くの会社は英語で会社案内をされると思いますが、その場で資料を初めて見るよりも事前に資料を読んでいただいた上で話をする方がより深くご理解頂けます。また、質問事項については当日までに回答を作成いただき、回答を見ながら深堀りをして頂くとより理解の深い面談になります。

 ベトナムに限ったことではないですが、言語以上にバックグラウンドの違いによる価値観の相違が多々見られます。同じ情報を聞いても別のことを考えてしまう相手と、お互いを理解して同じベクトルで話を進めるには、上記のような事前準備がとても大切です。

2. 面談当日 ~熱意を伝える鍵は〇〇〇コミュニケーション~

移動時間は柔軟に、余裕をもって!

 ベトナムの交通事情を考慮に入れて、初めての面談先へ行く際は通常の1.5倍から2倍程の移動時間を予定しておくことをお勧めしています。ベトナムは人口の拡大に交通網の整備が追いついておらず、移動時間を正確に見積もることが非常に難しいです。特に通勤ラッシュや帰宅ラッシュの時間になると大量のバイクが車の間をすり抜けるように走っており、車は動きを制限されながら進みます。
 例えば、ホーチミンのタンソンニャット国際空港から当社のオフィスがあるビテクスコフィナンシャルタワーまで通常30分程度で移動可能なのですが、朝9時に到着するための移動時間をgoogleマップで確認すると24~55分かかると表示されます。
 これくらいベトナムでの移動時間は余裕をもった見積もりが必要になります。

非言語コミュニケーションが印象を決める!

 お互いに言語でのコミュニケーションが100%ではない場合の面談において、非言語的コミュニケーションが非常に重要になります。席に座る姿勢、声のトーン、ジェスチャーなど普段以上に意識する必要があると言えるでしょう。
 例えば、面談相手がベトナム語で会話している時に、相手が何を言っている分からないため、資料に目を向ける方などいらっしゃいます。ですが、このような場面では、意識的に相手の目を見て雰囲気を感じて、周りの反応に合わせて笑ったり、うなずいたりするだけで印象が全く変わります。
 先日、あるベトナム企業に対して3社の日本企業が手を挙げてトップ面談を行いました。3社面談した後の売主の感想は「シナジー」の他、「面談相手の態度」に関するものでした。決してどこか会社の参加者の態度が悪かったということではありません。しかし、その売主にとっては目を見てうなずきながら話を聞く姿勢を示した相手に対して、「熱意がある」という評価をしました。

簡単なベトナム語

 アイスブレイクの必勝パターンをお持ちの方でしたら特に必要ないとは思うのですが、名刺交換の時に「Xin chào. Tôi là XX.(シンチャオ トイラーXX/こんにちは 私はXXです)」とベトナム語で話していただくだけでだいぶ場が和みます。
 日本でも外国の方の来客があると少し緊張するかと思いますが、その方が片言の日本語で挨拶をしてくれたらほほが緩みますよね。これは世界共通です。

3. 会食 ~手酌OK? でも飲むたびに乾杯を!~

日本とは大きく異なる宴席のマナー

 ベトナムにおいて、飲酒に関する宗教的な制限はありませんが、お酒の場特有の“ルール”とも呼ぶべき厳格なマナーがあります。

飲むたびに乾杯!

 ベトナムでは、お酒を口にするときは必ず周りの方と乾杯をします。最初だけでなく、食事中に飲み物に口を付ける時は毎回乾杯をするのが普通です。というのも、一人で勝手にお酒を飲む行為は会食へ対する退屈感を示す行動と言われているためです。もしあなたがベトナムでの会食中にお酒を飲みたいときは必ず、会話の流れの中で何かの理由を付けて周りと乾杯をして飲みましょう。
 また、最初の乾杯はホストの飲む量に合わせて飲むことがホストへの尊敬を表すと考えられています。さらに段々、場が温まってくると乾杯時に飲むお酒の量を誰かが仕切るようになります。その時は無理のない範囲でその流れに乗ると場に一体感が生まれます。
 上級テクニックですが、全体ではなく個人的に乾杯に誘って二人でグラスを空にした後、握手をしてお互いを称え合うこともあります。ぜひ、その会食のトップ同士でトライしていただけると良いと思います。
 ちなみに、日本語の「乾杯!」にあたるベトナム語は「Một! Hai! Ba! Vô!(モッ!ハイ!バー!ヨー/ゾー! ※最後の『ヨー』は南部、『ゾー』は北部での発音)」です。日本語に訳すと「1、2、3!飲むぞ~」といったところでしょうか。

自分に配られた缶ビールは自分用

 日本ではビールが出てくるとお互いに注ぎ合うと思いますが、ベトナムでは氷の入ったグラスと缶ビールが一人一セットで出てきて、これを各人が手酌で飲みます。このルールの根底には皆が同じ量を平等に飲むという考え方があるようです。また、力試しの要素もあり、足並みを揃えて缶を空けていくこともあります。
 自分のところにあるビールから他の方のグラスへ注ぐことが無いよう注意しましょう。もし、自分がビールを注ぐ際には、相手の缶から相手のグラスへ注ぐのがスマートな所作です。

食事の作法

 ベトナムでは、大皿の料理をみんなで分け合って食べる場面が多々あります。大皿の料理を取り分けるための箸が添えられていない時は、自分の箸を逆さにして取り分けを行います。このように箸を逆さにして使うことは、日本ではマナー違反とされますが、ベトナムでは普通に行われています。このように、共有する意識の強いベトナムでは、自分の近くの料理を他の方へ勧めて取り分けるといった行為は、会話だけでない繋がりを感じるという大切な習慣なのです。
 また、ベトナムでは平たいお皿の上にお椀が乗った状態で個人の器が準備されます。基本的にはそのままの形で上のお椀を使い、お椀に料理を載せます。下の平たいお皿は魚介の殻などを置くことが一般的です。ただし、お椀に入りきらない大きなエビなどが出てきたときには、下の平たいお皿に取り分けて使うこともあります。

食事の量

 ベトナムの会食ではホスト側が歓迎の意味を込めて沢山の料理を注文します。日本では出てきた食べ物はなるべく食べきることが基本的なマナーとされていますが、ベトナムにおいては多少残しても大丈夫です。多少残すくらいが十分に頂きましたというメッセージになるようです。もちろん大量に残してしまうのは失礼ですので程々にしましょう。

バックグラウンドが異なる仲間と共に

 先日、当社の35歳のベトナム人社員と話していた時に、良い意味で環境の違いを感じることがありました。彼の実家の持つ畑の上に高速道路が走る計画があり、土地の収用で大金が入るかもしれないという話が出た際のことです。私が「ベトナムは預金金利が高いから、それを預金して金利で生活したら一生安泰だね」と言ったところ、彼からは「預金にしたらインフレに負けてしまう……」と言われました。少し前までのデフレの日本では私の意見が正解だったと思いますが、世界に目を向けたら彼の意見が明らかに正解です。
 彼も私も35歳で同じ年数、生きてきましたが経験の違いにより答えが異なるということを改めて感じました。近年、日本でもインフレに関するニュースが増えていると思いますが、私自身もマインドチェンジが必要だと感じました。
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