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 日本M&Aセンター海外事業部の河田です。2023年11月21日にシンガポールのシャングリラホテルで開催された「STEWARD LEADERSHIP SUMMIT 2023」と、22日に開催された「STEWARDSHIP MASTERCLASS」に参加してきました。
 私は昨年に引き続き2年連続の参加となり、400人以上が集まる総会だけでなく、今年はファミリービジネスに関するマスタークラスにも日本M&Aセンターシンガポール代表の西井とともに参加してきました。このイベントの中で特に印象に残ったことなど本ブログにてご紹介できればと思います。

STEWARD LEADERSHIP SUMMITとは

 STEWARD LEADERSHIP SUMMITは、シンガポール政府による投資会社であるTEMASEK(テマセク・ホールディングス、以降、テマセクと記載)が設立したスチュワードシップ・アジア・センター(SAC)によって毎年開催されている、グローバルイベントです。SACは企業や政府のリーダー、投資家といった様々な人たちが「Steward Leadership」を実践できるようにサポートしている組織であり、このようなイベントを通じて彼らの価値観を伝えています。SACが提唱する「Steward Leadership」とは、「Steward Leadership is the genuine desire and persistence to create a collective better future.」とのことで、より良い未来の集合体の創造に対する真の情熱と持続性といったところでしょうか。様々な困難に直面する21世紀の企業が長期的な成功を実現するためのアプローチとして必要だと、SACは考えているようです。
参考①:STEWARD LEADERSHIP SUMMIT https://www.stewardshipasia.com.sg/
参考②:WHAT WE ADVOCATE: STEWARD LEADERSHIP https://www.stewardshipasia.com.sg/

ホー・チン氏も参加したSTEWARD LEADERSHIP SUMMIT2023

 21日の「STEWARD LEADERSHIP SUMMIT 2023」ではテマセクを2021年まで17年間率いた人物で、リー・シェンロン首相夫人でもあるホー・チン氏も参加しました。このように、影響力のある人物や、シンガポールやASEANから集まった企業経営者による活発な意見交換に参加できる貴重な機会となっています。ソブリン・ウェルス・ファンド(政府系ファンドのこと)として、世界でも規模が大きいとされる企業が、このような啓蒙活動をエコシステムとして取り入れているところにシンガポールの面白みを感じました。
STEWARD LEADERSHIP SUMMIT 2023の会場の様子

より良い未来を実現するために企業としてどのような貢献ができるか

 「STEWARD LEADERSHIP SUMMIT 2023」の講演やパネルディスカッションではイノベーションや環境問題、ダイバーシティ等、今後ますます企業として向き合うべき課題となる話題が話し合われ、未来がどのような状況に陥ったとしても「サステナビリティ(持続可能性)」を、企業として当たり前のように組み込むことの重要性を感じました。また、ASEANを含めた世界の大きなトレンドの文脈では、アジア諸国やアフリカ諸国の新興国の躍進、政府の役割やテクノロジーの進展など企業や投資家にとって考慮すべき点が解説されていました。
 さらに、それぞれの講演者やディスカッションの中で、周囲の関係者について話されるときに「ステークスホルダー」ではなく、「エコシステム」という言葉が使われていたことが印象に残りました。これは、単なる利害関係者だけの問題ではなく、当事者を含めた関係者全員で影響し合い信頼関係を構築しつつ、企業または個人として課題に向き合っていくかが重要であることの表れであると感じました。
 私と一緒に参加していた日本の経営者の方は、「あらゆるバックグラウンドを持つリーダーが会社の方針として『サステナビリティ』を発信することで、自分たちでより良い未来を作っていこうという気概を感じることができた」と非常に感銘を受けておられました。どの講演、ディスカッションからも企業や投資家、個人がどのように未来に貢献できるかといった前向きな話が非常に印象に残りました。

万国共通!? ファミリービジネスにおける悩みの種は事業承継

 22日には、「STEWARDSHIP MASTERCLASS」として開催されたファミリービジネスに関する勉強会「ADVANCING FAMILY BUSINESSES OF TOMORROW」に参加しました。前日の大規模なサミットとは打って変わって40人程度が参加し、密度の濃い時間を過ごすことができました。特にASEAN各国からファミリービジネスのオーナーが多く参加しており、彼らの体験や考えを聞くことができる非常に有意義な時間になりました。
 参加していた経営者は、創業者からバトンを渡された二代目、三代目で、実際に事業承継を体験されてきた方が多かったです。また、実際にM&Aでファミリービジネスとして営んでいた祖業を譲渡し、その後に新たに別の会社を創業された方などもおり、日本では当たり前のように行われるようになった事業承継型M&Aも、シンガポールをはじめとしたASEAN諸国でも広がりを見せていると実感しました。
 彼らと話している中で特に話題になったのが日本企業へのリスペクトです。企業名に日本語がついていたとある会社のオーナーからは、創業者である先代が日本企業に修業に行った時に日本の技術に感銘を受け、尊敬の念を込めて日本語を社名に使ったというエピソードを聞くことができました。また知人の会社が日本企業とのM&Aを通じて成長している姿を見て、「そういう手法があるのかと目から鱗だった」という話、取引先の中で日本企業だけが支払いの期日をしっかり守ってくれるなど、多くの日本企業に対するポジティブな実体験を聞くことができました。
 また、日本には長く繁栄する企業が多いがどのように事業承継しているのか、そのプロセスをどのように支援しているか、といった、日本の事業承継の手法や日本M&Aセンターの事業内容に興味を示すビジネスオーナーやコンサルタントも多かったです。
 今後もシンガポールをはじめASEANのマーケットで、日本M&Aセンターが日本で培ったノウハウをさらに活かしていけるのではないかと実感するこができました。日本企業だけでなく世界の企業の存続と発展に貢献できるよう、引き続き尽力していきたいという想いを強くした出張となりました。
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