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 皆様こんにちは。日本M&Aセンター海外事業部の松原です。ベトナムを中心にクロスボーダー案件を担当しております。
 2023年は日越国交関係樹立50周年の節目となる年で、政治や経済、文化などの分野において友好関係がさらに発展した1年でした。今日は、企業の究極的な友好関係であるM&Aという視点から日越間のこの記念すべき1年についてお伝えしてみたいと思います。また、後半では2024年についての展望にも触れていきます。

2023年ベトナム経済振り返り

日本と強いつながりのある経済成長国ベトナム

 ベトナムは、日本の歴代首相が就任後に最初の外遊先として選ぶ日本とつながりが深い東南アジアの国です。他の東南アジア諸国に遅れて2000年代に入ってから経済成長が始まり、その過程で日本から多くの援助を受け、近年チャイナ・プラスワン戦略で最も注目される国になっています。年率6%前後のGDP成長※1を誇るほか、人口も2023年の3月に1億人※2(世界15位※3)を超え、巨大な消費市場としても注目されています。単一民族国家で、教育レベルが高く、勤勉な国民性という点からも数々の外資企業がベトナムへの進出を決めている理由のひとつです。

※1 2023年GDP成長率は5.05%と政府目標に届かずも、第4四半期は6.72%と加速(JETRO、2024年1月11日付)
※2 ベトナムの人口、1億人突破もデータの不一致で記念イベント開かれず(VIETJO ベトナムニュース、2023年6月21付)
※3 World Economic Outlook Database

2023年のベトナム経済

 リーマンショック以降、急成長を続けてきたベトナム経済ですが、2022年のベトナム政府による大規模汚職事件の摘発や意図的な不動産景気の引締めにより、不動産市場と株式市場が低迷しました。さらに、2023年の第一四半期は世界経済の減速が輸出偏重のベトナム経済にも大きく影響を与え、輸出額が前年同期比12%近く減少しました。しかし、内需の強さと世界経済の回復により2023年通年のGDP成長は5.05%を達成しました。

参考:ベトナムの2023年成長率は政府目標クリアならずも、過度な悲観は不要(第一生命経済研究所)

M&A件数の推移

 先述の2023年のベトナム経済の低迷により、2023年の前半では海外投資家の間で様子見モードが広がり、日本企業によるクロスボーダーM&A件数(In-out取引)は2023年に661件で5.8%増加したのに対し、ベトナムに対するIn-out投資件数は20件前後に留まり、前年の2022年に比べると2割ほど減少した具合です。件数が少ないながらも、三井住友銀行がベトナム民間商業銀行のVPバンクに1,831億円相当を出資する大型案件が記憶に残った1年でした。

参考:2023年のM&A回顧(2023年1-12月の日本企業のM&A動向)(MARR online)
三井住友、ベトナム大手銀行に2000億円出資 アジア強化(日経新聞、2023年3月27日付)

2023年ベトナムのクロスボーダーM&A動向

 M&Aセンターのコンサルタントは日本企業によるベトナム企業との資本業務提携のお手伝いを十数年前から行っており、現在ではベトナム現地に子会社を構え、多くのケースを見てきました。
 ここからは、近年の傾向についてお伝えします。

ソフトウェア・情報サービス業が減少し、食品関連が急増

 2023年の20件ほどのM&Aの業界別にみると、2022年までは毎年10件近くあったソフトウェア・IT企業へのM&Aが減り、2023年は半分程度になっています。経済成長により人件費が上がり、廉価なオフショア開発技術者の獲得を目的としたM&Aが一段落したことが理由の1つと推測します。
 同様に、物価高と人件費増を理由に、製造業へのM&Aも減少傾向にあります。

 特筆すべきは、食品卸企業へのM&Aが急増し、もっとも件数が多いカテゴリーになっている点です。日本とほぼ同じ人口を有しているのに国民の年齢中央値が若い(約33歳※4)ベトナムは、2035年まで人口が増加すると言われており、人口減による国内消費減少に苦しむ日本とは対照的な存在です。日本国内の食品製造業、食品流通業がベトナムの成長マーケットを取りにいく流れは、しばらく続くと思います。
 今までベトナムM&Aにおいて人気があった不動産・建設業界は先述の国内経済不況によって投資が見送られたと思われ、2023年は公表ベースで事例を見つけることができませんでした。

4 Median age of population(United Nations)

ニュースで読む2023年ベトナムのクロスボーダーM&A

 ここからは、日本M&AセンターのM&Aマガジンから、日本企業とベトナム企業におけるクロスボーダーM&Aのニュースを引用して、2023年の事例として紹介します。

イオンフィナンシャルサービスとPTFの事例

イオンフィナンシャルサービス株式会社(8570)は、Post and Telecommunication Finance Company Limited(ベトナム ハノイ、以下PTF)の持分を取得し、完全子会社とする持分譲渡契約の締結を決定した。

〔中略〕

イオングループでは、ベトナムを海外戦略の重要国と位置付け、小売事業の店舗網を拡大している。

現地で個人向けローン事業を展開するPTFを子会社化することで、ベトナムにおける事業の成長を図る。

引用元:イオンフィナンシャルサービス、ベトナムの金融企業PTFを完全子会社化へ(M&Aマガジン、 2023年10月20日付)

双日とDaiTanVietの事例

双日株式会社(2768)は、双日アジア会社および双日ベトナム会社と共同で、ベトナムの業務用食品卸 DaiTanViet Joint Stock Company(ベトナム ホーチミン、以下「DaiTanViet」)の全株式を取得した。

〔中略〕

ベトナムは経済成長にともない、近代的な小売業態が急速に発展している。

DaiTanVietの買収で、双日は、総合食品卸の形成と、バリューチェーンの強化を図る。

引用元:双日、ベトナム業務用食品卸大手DaiTanVietを買収(M&Aマガジン、 2023年11月22日付)

2024年のベトナム

つづく高成長

 ベトナムは、米中貿易摩擦問題で漁夫の利を得る国です。多くの製造業は中国を飛び出し、ベトナムに工場を移し始めています。新たな世界の工場として存在感を増すベトナムは輸出によりさらに経済成長していきます。豊かになった国民は消費活動がさらに活発になります。ベトナム政府は2024年の経済成長率目標は6.0~6.5%と設定※4しており、2023年よりも高い成長目標を目指しています。

※4 2024年のGDP成長率目標は6.0~6.5%に、国会が決議を採択(JETRO、2023年11月21日付)

不動産・建設業界の復調

 活発な消費マーケットに目を付けたM&Aが多かった2023年でしたが、私は2024年もそのトレンドは変わらないと考えます。さらに、2022年の不況の影響から徐々に好転する不動産・建設業界へのM&Aは2024年に増加すると見込んでいます。
 力強い経済成長、1億人を超えるマーケット、親日、安定した社会情勢、そんなベトナムM&Aに、今年も目が離せません。
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