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 こんにちは、ジャカルタの安丸です。インドネシアでも華人向けの旧正月中です。イスラム国家のインドネシアですが、日本M&Aセンター インドネシア駐在員事務所が入居しているオフィスビルでも旧正月特有の華やかな装飾でお祝いムードです。(本ブログ記事作成日は2022年1月末)

インドネシアの新型コロナ感染状況(2022年1月末時点)

 まずインドネシアの新型コロナ感染状況(2022年1月末時点)ですが、オミクロン株の感染者が増加傾向(市中感染及び死者も確認済)にあります。政府は2022年2月中旬から3月上旬が感染のピークと予想しています。ただ病床数を確保するため、保健省はオミクロン株感染者に対しては条件付き(45歳以下、症状が軽い、持病がない等)で自宅隔離も認める回状を出しています。
 現在主要都市では出社制限が出されており、オフィス出勤は50%しか認められていません。
 ただ政府は、ワクチン接種証明の活用により、2021年7月や8月のロックダウンのような締め付けでなく、経済活動に重点を置き冷静に対応しているように見受けられます。
※本ブログは2022年1月末のインドネシアでの体験をもとに執筆しています。渡航に関する最新情報は「外務省 海外安全ホームページ」等をご確認ください

データで見るインドネシア企業への投資

 前回のインドネシアブログでは、インドネシアの国自体、今後のGDP予測等のマクロ的な論点をお話ししましたが、今回のブログではインドネシアM&Aの特徴についてお話しします。

多数派は一部出資(マイノリティ出資)

 2000年から2019年まで(コロナ前まで)のインドネシアへの日本企業によるM&A件数は累計で約200件となりました。日本の買い手企業の属性、M&A形態及び譲渡企業体系は下記の通りです。
 日本の買い手企業の属性は、件数ベースでは下記の割合となっています。

  • 上場企業・上場企業出資先海外法人(シンガポールの子会社等) 76%
  • 非上場企業 24%

 またM&Aの形態(スキーム)としては、下記の割合です。

  • 一部出資 56%
  • 買収(支配権の移転) 40%
  • 事業譲渡 3%
  • 合併 1%

マイノリティ出資が多くなるワケは

 買い手が上場企業中心であったり、M&A形態で一部出資案件が買収の件数を上回っている理由は、インドネシア企業のM&Aを進めるうえで論点となりがちなインドネシア特有の問題が挙げられるでしょう。インドネシアのM&Aでは、財務諸表の信憑性の欠如や手続きの煩雑さ等、困難が伴う場面に直面します。
 そこで、リスクの高いマジョリティ株式取得(買収)を避け、マイノリティ出資から始め、インドネシアの国・パートナーを理解した上で買収へ進める形が検討されてきたことが理由かと思います。
 また、上記の割合は2020年11月に成立したオムニバス法による外資規制撤廃の前の話なので、業界によって外資規制によりそもそも過半数の株式を取得できなかったという理由もあるかとは思います。

買い手企業 M&A形態

出典:レコフM&Aデータベースより日本M&Aセンター作成

業種は非製造業が多い

 このように少々“アクが強い”ともいえるインドネシアでのM&Aですが、それでも近年はインフラ・エネルギー分野への投資に加え、内需獲得を狙って件数が増加している印象です。また、インドネシアに既に進出している日本企業が、子会社との相乗効果を狙って投資検討されているケースも増加しているようです。
 2000年から2019年までの累計のデータにおいて、インドネシアの譲渡企業の業種としては、非製造業が43%と製造業の36%を超えています。これは製造業は100%で外資企業が自前投資できたため、M&Aせずとも海外進出が図れたことが理由かと思います。
 一方の非製造業は、外資規制によりパートナーが必要であったためJ/V形態とともに、M&Aを検討した日本企業も多かったものと考えられます。
※ジョイントベンチャー、共同企業体
インドネシア譲渡企業体系

出典:レコフM&Aデータベースより日本M&Aセンター作成

現在の譲渡企業側のニーズ

 インドネシア企業(非上場企業)がM&Aによる資本提携を希望している理由は、下記3点に集約されるかと考えます。

  1. 後継者不在
  2. 事業拡大のためシナジーのある投資供与先を日本企業から探す
  3. 競争激化に対応するため資金供与いただけるパートナーを探す

1. 後継者不在

 1つ目に挙げる「後継者不在」は、日本の後継者不在企業と同様に、事業の後継者としての子供がいない/子供が継がない/継がせるには能力が…、といった理由でM&Aを検討しています。インドネシアの有力企業はまだまだ家族経営の企業が多いのですが、親の背中を見て育った子供も、海外留学等を経て、父親の起こした企業よりも自身でやりたいことを自らチャレンジする世代へと変わっている印象を受けます。
 このような有力後継者不在企業は、自身のExit対策としてIPOを目指し、所有と経営を分離することを考えるとともに、M&Aも選択肢として検討することが増えてきています。
 譲渡先としては、まずインドネシア企業への譲渡を検討される企業が多いようですが、既に日本企業との取引等がある会社は、キーマン社員に日本的経営を学ばせたい、日本企業の方が約束を守ってくれる等の理由で、日本企業を対象とされるケースがあります。
 なお、企業を譲渡するということに対しては、ドライに考えている企業が多いように思います。

2. シナジーのある投資供与先を日本企業から探す

 2つ目のニーズとして挙げたい「シナジーのある投資供与先を日本企業から探す」というケースについて解説します。この場合、自前でのIPOを目指している企業が多いのですが、そのIPOをする前に、一部出資にて日本企業とのパートナーシップを希望する、というものです。これは上場に備えて、日本式経営(人事、財務税務、工場管理、ノウハウ、ブランド等)を取り入れたいニーズや、資金を投入しIPOのスピードを速めたいというニーズから生まれます。

3. 競争激化に対応するためパートナーを探す

 3つ目は、当座の資金繰りを良くするため、資金供与してもらえる提携先を探しているケースとなります。
 このように、「後継者不在」といった日本でもなじみ深いニーズから、「日本企業と手を組んだうえでその経営手法を取り入れたい」といった前向きなニーズまで、インドネシアの譲受企業にもさまざまなニーズが存在するのが現状です。

インドネシアのM&Aの難易度

 さて、ここまでインドネシアM&Aの特徴につきお話してきましたが、ASEANの他国と比較してもインドネシアのM&Aの難易度は比較的高いと言われており、その点について触れておきたいと思います。これは、そもそもM&Aに関しての法務手続きが煩雑であること及び、財務諸表の透明性が低いことが理由としてあげられます。

インドネシアで法廷監査が必要な企業

 インドネシアでは、下記に挙げる以外の企業は法定監査を受ける必要がありません。

  1. 上場会社
  2. 500億ルピア以上の総資産又は売上の企業
  3. 外資企業以外

インドネシアで法廷監査が必要ではない企業の複数決算書問題

 そこで、法定監査を受ける必要のない中小の企業では「通常実際の利益を記載している決算書」、「税務当局用決算書」加えて「銀行用決算書」といったように、同一決算年度に対して複数決算書をごく「当たり前のように」作成している企業が多々あります。当地の銀行も決算書が実態を表していないことは承知の上で、キャッシュフローを見て、おおよその売上、利益等を判断し融資しているケースもあります。
 さらには、監査を受けていても、その監査済み決算書の信憑性は、監査している会計士(会計事務所)のレベルに左右されます。
 そのためM&Aを実施する上で、当地の現地事情に精通した専門家の起用は必須であり、ある程度のリスクは覚悟のうえで投資判断を進める必要があります。
 とは言え、2016年のタックスアムネスティ(税務恩赦)制度により、多くの企業が海外の隠れ資産を開示し、その資産開示に伴う、簿外税務負債の支払い実行により、M&A上での税務リスクは各段に少なくなりました。
 法務の手続きについても、OSS(オンラインシングルサブミッション)の活用等で以前と比較すると格段に検討は進めやすくはなってきています。是非、リスクとリターンを十分検討の上、積極的にインドネシアM&Aに取り組んでいただきたいと思います。

 今回はインドネシアM&Aの難易度について、さわりのみの解説となりましたが、次回は各論点についてお話しさせていただきます。また次回をお楽しみに!!
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インドネシアM&A 日本M&Aセンターの支援実績、ポイント

 以下のそれぞれのリンクから、日本M&Aセンターの支援実績とインドネシアでのM&Aを検討するにあたり留意するポイントをお読みいただけます。
インドネシアM&A支援実績紹介
インドネシアM&Aのポイント

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