目次

今回は、M&Aの過程で取り交わされる意向表明書に記載される基本的な内容の一部についてご紹介をさせていただきます。

基本事項

意向表明書(LOI)に記載される事項として最も基本的な情報の1つは取引条件の概略であり、一般的には以下のような事項が挙げられます。

  • 取引スキーム

※最も多いのは株式譲渡。付随して事前に行われるべき譲渡対象外の事業・資産の切出しに関する条件が記載されることも。

  • 譲渡対象

※株式譲渡の場合は株式。事業譲渡の場合は個々の資産・契約・従業員などを移転。

  • 譲渡対価

取引スキーム

まず取引スキームについて、最も多いのは上記のとおり対象会社の株式の譲渡による経営権の移転です。しかし、対象会社の所在国、業種によっては外資規制の適用を受けるため、譲渡対象にすることのできる株式の割合に制約があったり、対象会社の事業の範囲を縮小させるとともに、関連する資産・負債等について売り手に残すべくこれを切り離す手続きが必要となったりする場合もあります。
また、デューデリジェンス(買収監査/DD)実施前にすでに対象会社に労務面や税務面で問題があることが分かっている場合、対象会社を株式譲渡によりそのまま譲り受けることが困難であるとしてあらかじめ事業譲渡が選択されるケースや、売主の方で新会社を設立し、当該新会社に対象会社の事業に必要な資産・契約・従業員などを承継させてから、当該新会社の株式を買い手に譲渡するというケースもあります。(但し、許認可など様々な要因によりこの選択肢を採用することができないケースがあります)
なお、いずれにしても最終的なスキームはLOI締結後のDD実施後、対象会社に関する様々なリスク要因が明らかになって初めて検討・確定することができるものですので、LOIに記載されている取引スキームはあくまでその時点の暫定的なものであり、DD実施後に締結される最終契約書にて確定される旨明記することが重要です。

文例: The Scheme shall be formally determined in the Definitive Agreement*, taking into account the findings from the due diligence set forth in Article 5 to be conducted in the future.
*ここでは最終契約書を意味します。

譲渡対象

次に譲渡対象について、100%の株式譲渡が可能であることがあらかじめ分かっている場合にはそのまま記載すればよいのですが、外資規制の適用の有無が不透明であることから取得できる株式数が不透明であったり、事業譲渡スキームにおいて譲渡対象とすべき資産・契約・従業員などが明らかでなかったりする場合は、ある程度幅を持たせた記載にせざるを得ないことがあります。
なお、取引スキームが確定しないと譲渡対象も最終確定しないことから、上記と同様に、DD実施後に締結される最終契約書にて確定される旨明記することが必要になります。

譲渡価格

譲渡価格については、その後の価格交渉の土台になる情報ですので、その算定根拠、算定の前提条件についてある程度明確にしておく方が望ましいです。
なお、この譲渡価格についても上記同様、DD実施後に締結される最終契約書にて確定される旨明記することが必要になります。

法的拘束力

最後に、上記のような取引条件の概略に法的拘束力を付与すべきかという点ですが、これはもちろん付与すべきではありません。すでに何度も言及しているように、あくまでこれらの条件はあくまでDD実施前の初期的・暫定的な内容になりますので、法的拘束力を付与してしまったら当事者がこの合意に拘束されてしまい大変なことになってしまいます。

意向表明書の基本①はこちらから
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